東京圏から地方へ移住する人を後押しする「移住支援金」。世帯なら最大100万円、子育て加算や起業支援と合わせれば最大300万円にもなる制度です。移住の強力な誘因になる一方で、「もらって終わり」にはなりません。受け取ったあとに5年間の継続居住が前提となっている点を忘れてはいけません。
移住支援金とは──最大300万円の後押し
移住支援金は、東京23区に在住、または東京圏に住んで23区へ通勤していた人が、東京圏外の対象自治体へ移住し、就業・起業・テレワークなどの要件を満たした場合に受け取れる制度です。金額は世帯で100万円、単身で60万円が基本。18歳未満の子どもを帯同する場合は1人あたり最大100万円が加算されます。さらに地域課題の解決に取り組む社会的起業を行えば、起業支援金と合わせて最大300万円になります。
見落とされがちな「5年」という条件
支援金は、5年間の継続居住を前提に交付されます。申請から3年未満で転出すると原則として全額、3年以上5年以内の転出では半額の返還を求められます(実際の扱いは自治体の要綱によって異なります)。また、就業を要件に申請した場合は、申請から1年以内に要件を満たす職を辞すると全額返還の対象になります。ただし各自治体の要綱には、雇用企業の倒産・災害・病気等のやむを得ない事情を首長が認めた場合は返還を求めない、というただし書きが置かれているのが一般的です。返還の条件をより詳しく整理した記事はこちらをご覧ください。
加えて、支援金は税務上「一時所得」として扱われ、受給額が年間50万円の特別控除額を超える場合や、他の一時所得との合計が控除額を超える場合は課税対象となります。つまり、受け取った金額は「5年住み続けて、はじめて自分のための、自分に与えられたお金」だと考えておく必要があります。
「支援金で呼ぶ」だけでは、定着は続かない
制度の設計そのものが示すとおり、支援金はあくまで移住の“入口”です。5年間その地域で暮らし続けられるかどうかは、仕事や住まい、子育て環境、そして地域とのつながりといった「暮らしの実感」にかかっています。ここがうまくいかず早期に離脱すれば、移住者本人には返還の負担がのしかかり、自治体にとっても移住実績が積み上がりません。支援金という“呼ぶ力”は、定着を支える仕組みとセットになって、はじめて成果に変わります。
“呼ぶ”施策と“定着させる”施策は両輪
移住支援金が「地域へ呼ぶ」施策だとすれば、その後の伴走——暮らしの困りごとを拾い、定着まで見届ける取り組みは「地域に根づかせる」施策です。前回取り上げた関係人口づくりと同じで、入口から定着までは一本の線でつながっています。支援金の“その先”をどう設計するかが、これからの移住施策の分かれ目になりそうです。
- 内閣府「地方創生」移住支援金(制度概要・金額・実施都道府県/市町村一覧) https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html
- 国税庁「地方公共団体の地方創生起業支援事業及び地方創生移住支援事業に基づき支給される各支援金の課税関係について」(一時所得の扱い) https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/shotoku/h31/004/besshi.htm
- 移住先自治体の移住支援金交付要綱・実施要領(返還条件は自治体により異なります。例:高知県 https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2025031300026/)
- ふるさと回帰支援センター「2025年の移住相談件数」 https://www.furusatokaiki.net/topics/press_release/p54118/


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