「この仕事がしたい」——その一心で、知らない土地へ移り住む人がいます。高知市の桂浜水族館。SNSやユニークな飼育員、マスコット「おとどちゃん」で全国的に知られるこの水族館に、県外から移住して働くスタッフがいます。地域の“魅力的な仕事”が移住のきっかけになり、定着の受け皿になる——その一例を見てみました。
「働きたい場所」が、移住の入口になる
高知県の公式移住サイト「高知家で暮らす」には、桂浜水族館で働く群馬県出身の若手スタッフのインタビューが掲載されています。「やりたいこと」を諦めずに探し続けた末にたどり着いたのが、この桂浜水族館でした。移住のきっかけが、地域そのものより先に「ここで働きたい」という仕事への思いだった——このパターンは、移住施策を考えるうえで示唆に富んでいるように感じます。
なぜ「桂浜水族館」だったのか
桂浜水族館は、昭和6年開設の歴史ある市営水族館で、通称“ハマスイ”。土佐湾の生きものを中心に、規模は大きくないですが約250種7,000点を飼育しています。テレビやSNSで、飼育員やマスコット「おとどちゃん」、ユニークな公式アカウントが話題になり、全国区の知名度を得ました。この「知られていること」「個性があること」自体が、遠くに住む人にとっての“接点”になります。行ってみたい、働いてみたいと思わせる場所があることは、それだけで移住の入口を生み出します。
“仕事の受け皿”が、定着を左右する
移住は「来てもらう」だけでは終わりません。実際に暮らし続けられるかは、その土地に「続けたい仕事」があるかどうかに大きく左右されます。好きで選んだ仕事なら、多少の不便があっても踏ん張れる。逆に、仕事が合わなければ、環境が良くても離れてしまう。桂浜水族館の例は、「魅力的な職場が一つあること」が、移住者を呼び、そして根づかせる力を持つことを教えてくれます。
自治体にできること──“働く場”の魅力を、届ける
自治体にお願いできることは2つあると考えます。ひとつは、地域の中にある「その土地ならではの仕事」「個性的な職場」を見つけ、その魅力を外に発信すること。もうひとつは、移住して働き始めた人が、その仕事と暮らしを続けられるよう、移住後も声を聞き、支えること。呼び込む力(魅力的な仕事の発信)と、根づかせる力(移住後の伴走)は両輪だと感じます。桂浜水族館のような“光る職場”を入口に、その先の定着まで設計する視点が、これからの移住施策には求められます。
著者が仕事や旅であちこちを巡っていた数年前(もっと前かもしれません)、“ハマスイ”さんのことをTwitter(今はXですね)でつぶやいたら、すぐに反応をいただいたのを思い出しました。水族館なのに、見るだけでなく展示物(魚)の中に足を入れる——ドクターフィッシュ体験が水族館でできるのは、当時はまだ珍しかったように思います。移住・定着とは少し離れた余談でした。
- 高知県移住ポータルサイト「高知家で暮らす(高知で見つけた私スタイル)」移住者インタビュー(2025年8月) https://kochi-iju.jp/interview/details_1821.html
- 高知市 観光情報「桂浜水族館」 https://www.city.kochi.kochi.jp/site/kanko/suizokukan.html


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