25組合が146組合へー「マルチワーカー」

国や行政の施策

人口急減地域で、一人の職員が季節ごとに複数の会社の仕事をかけもちする「特定地域づくり事業協同組合」。制度開始から6年弱で、使う組合は146組合まで増えました。村上市の事例から担い手確保の新しいかたちを考えます。

一人の職員が、季節によって複数の会社の仕事をかけもちする──そんな働き方を制度として後押しする仕組みが、人口が急激に減っている地域で広がっています。「特定地域づくり事業協同組合」。2020年の制度開始からまだ6年に満たない中で、制度を使う組合は全国146組合まで増えました。私たちは、この数字の伸び方に、担い手確保のもうひとつのかたちを見ています。

25組合が146組合へ──短期間での広がり

根拠となるのは「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」。2020年6月に施行された、比較的新しい制度です。総務省や農林水産省が公表してきた資料を時点ごとに並べると、次のように増えてきたことがわかります。

  • 2021年8月時点:17組合
  • 2021年11月24日時点:25組合・25市町村
  • 2022年2月28日時点:33組合
  • 2025年3月31日現在:108組合・111市町村
  • 2026年7月1日現在:146組合・149市町村

※2025年・2026年の数字は、総務省が公表している「特定地域づくり事業推進交付金交付決定一覧」に掲載された組合の数です。2021年・2022年の数字は、同省の調査研究事業報告書および認定状況資料によります。

一人の職員が、複数の会社をかけもちする仕組み

この制度の中心にあるのは「特定地域づくり事業協同組合」という組織です。都道府県知事の認定を受けた事業協同組合が職員を無期雇用し、季節や繁閑の波に応じて、組合員である複数の中小事業者へその職員を派遣します。本来、労働者派遣事業を営むには許可が必要ですが、この組合は届出制で実施できる特例が設けられています。

対象となる地区には要件があります。人口規模や人口密度、事業所数などに照らして、地域づくり人材の確保に特に支援が必要な地区だと都道府県知事が判断すること。過疎地域に限られていない点も、この制度の特徴のひとつです。

財政面では、組合の運営費に対して特別交付税措置(措置率2分の1)が講じられています。算定にあたっては、派遣職員の人件費が1人あたり年400万円、事務局運営費が年600万円を上限として見込まれています。

新潟県村上市「なりわいネット」という実例

新潟県村上市では、2025年11月25日付で「村上市複業協同組合なりわいネット」が認定を受けました。農林水産業、商工業など、地域産業の担い手不足に対応する仕組みとして位置づけられており、市の公式ページでは現在もマルチワーカーの募集が案内されています。

同じ新潟県内では、十日町市の「十日町市複業協同組合TOMOWORK」が2023年5月16日に認定を受け、2033年5月15日までの10年間を有効期間として活動しています。

県をまたいだ例では、山形県小国町の「おぐにマルチワーク事業協同組合」があります。17の事業者が組合員となり、農業、炭素加工製造業、ガス業、熱供給業、宿泊業、飲食店、娯楽業、食料品製造業などへ職員を派遣しています。総務省の事例資料によると、雇用した職員9名は全員が移住者で、事務局員2名もまた移住者です。森林セラピー基地の整備や、神社の神輿担ぎ、「お田植え祭」「抜穂祭」、町民有志による新春餅つき大会といった地域行事への参加を通じた交流も紹介されています。

「呼ぶ」の先にある、働き方の設計

私たちは、移住・定住施策を、支援金や住宅補助といった「呼び込む」段階の施策と、呼び込んだ人がその地域でどう働き続けるかという「根づかせる」段階の施策に分けて見ています。特定地域づくり事業協同組合は、後者に位置づけられる制度です。ひとつの仕事だけでは一年を通じた雇用が成り立ちにくい地域で、複数の仕事を組み合わせることで、無期雇用という安定した働き方を用意する。地域おこし協力隊が任期後に約7割の高い定着率を残している背景にも「その後の仕事」の存在があることを、私たちは別の記事で取り上げました。マルチワーカーという働き方は、その「その後の仕事」をあらかじめ制度として組み込んでいる点で、あわせて見ておきたい仕組みだと考えています。

出所

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