二地域居住の“受け皿”をつくる──特定居住促進計画と支援法人のしくみ

国や行政の施策

2024年11月に施行された改正法で、市町村は二地域居住を進めるための「特定居住促進計画」を作り、地域と二地域居住者をつなぐ民間の法人を「支援法人」に指定できるようになりました。令和8年4月末時点で、計画は49件、支援法人は85法人。国は施行から5年間で、それぞれ累計600を目標に掲げています。二地域居住の“受け皿”づくりが、制度として動き始めています。

二地域居住を後押しする法律のしくみ

根拠となるのは「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」の改正法です。令和6年5月15日に成立し、同年11月1日に施行されました。しくみは、都道府県と市町村の二段構えになっています。

  • 都道府県が、二地域居住に関する事項を含む「広域的地域活性化基盤整備計画」を作成する
  • 市町村が「特定居住促進計画」を作成し、区域、地域の方針や求める二地域居住者像、拠点施設の整備、二地域居住者の利便性向上や就業機会の創出につながる施設の整備などを記載する
  • 計画にもとづく事業には法律上の特例が設けられている(例:住居専用地域で、二地域居住者向けのコワーキングスペースを開設しやすくする)
  • 市町村長は、二地域居住の促進に取り組むNPO法人や民間企業(不動産会社など)を支援法人に指定できる
  • 市町村・都道府県・支援法人・地域住民・不動産会社・交通事業者・商工会議所・農協などで協議会をつくることもできる

数字で見る、いまの現在地

国土交通省の資料によると、令和7年12月31日時点で特定居住促進計画は28計画、支援法人は51法人、都道府県の広域的地域活性化基盤整備計画は20計画でした。令和8年4月30日時点では、それぞれ49計画・85法人・25計画に増えています。

国は法案の段階で、施行後5年間の目標(KPI)として、特定居住促進計画の作成数を累計600件、支援法人の指定数を累計600法人と定めています。施行から1年半ほどの時点では、計画・支援法人とも目標に向けて積み上がっていく途中の段階にあります。

「支援法人」は、二地域居住の受け皿

この制度でとくに注目したいのが支援法人です。法律上は「特定居住支援法人」と呼ばれ(国土交通省の資料では「二地域居住等支援法人」とも表記)、国土交通省は地域と二地域居住者の橋渡しを担う中間支援組織と位置づけています。二地域居住を希望する人への情報提供や相談対応、イベントの開催、拠点施設の整備などを担い、市町村に計画の提案を行うこともできます。

たとえば静岡県焼津市は、二地域居住等促進協議会を設置したうえで「焼津市特定居住促進計画」を策定し、令和7年12月に民間企業2社を特定居住支援法人に指定しています。

移住の分野では、相談から移住後までを担う地域の団体、いわゆる“受け皿”が、定着を左右すると私たちは考えてきました(移住定着の成否を分ける“受け皿”)。支援法人の制度は、二地域居住の分野でその受け皿を公式に位置づけるしくみだと捉えることができます。

そのうえで私たちは、この橋渡し役を担う企業を、地元の企業だけでなくほかの地域の企業にも広げて考えることが、より広く、より多角的に地元への定着を支える手段になるかもしれないと考えています。二地域居住者のもう一つの拠点がある都市部の企業や、地域とは異なる分野のノウハウを持つ企業が地元の企業とあわせて加わることで、地域と関わる入口をさらに広げられる可能性があります。

国の支援:二地域居住先導的プロジェクト実装事業

国土交通省は、二地域居住の中長期的な課題の解決に向けた先導的な取り組みを支援する「二地域居住先導的プロジェクト実装事業」も実施しています。令和8年度は、地方公共団体と民間事業者・団体等でつくるコンソーシアムを対象に、調査・検討の経費は定額(年2,000万円が上限)、実証の経費は2分の1を補助する内容で、令和8年7月31日から8月31日まで募集が行われました。

二地域居住を「定着」の入口として見る

私たちは行政の出身ではなく、事業会社で事業企画やマーケティングを担ってきました。行政の現場から見ると的外れなところもあるかと思いますが、畑が違うぶん、少し違った見方をすることがあります。

私たちは、二地域居住を、関係人口と移住・定着のあいだにある段階として見ています。地域と関わり始めた人が、通い、暮らしの拠点をもう一つ持ち、やがて根づいていく——その途中にいる人を、地域がどう迎え、どう関わり続けるか。特定居住促進計画と支援法人のしくみは、その受け止め方を地域ごとに設計するための道具になりうると考えています。関係人口をめぐる国の動きについては、自治体が“関係人口”創出に動き出すでも取り上げています。

出所

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