全国の自治体の移住支援策。徳島県上勝町はごみゼロと「いろどり」という独自の看板政策で差別化し、総合戦略の中核になっています。
移住支援金、住宅取得補助、空き家改修補助など、全国の自治体の施策を見てみると、非常によく似ていて、どこの自治体が自分に合っているのかが分からなくなることはないでしょうか?補助金や要件で差をつけるのは難しいのかもしれません。何か“とんがった施策≒他にはない施策”を打たれている自治体はないか‥と自分の記憶をたどりながら調べてみると、徳島県上勝町がありました。
焼却炉を、なくてもできる
上勝町のごみ処理は、1990年代まで各地区での野焼きが中心だったようです(2001年からその野焼きも法律で原則禁止となっています)。1997年の容器包装リサイクル法の施行にあわせて9分別の資源回収を始め、1998年には野焼きに代わる小型焼却炉を2基導入。しかし導入してすぐにダイオキシン問題が浮上し、1基はダイオキシン対策の基準に対応できないことが分かりました。町はここで、焼却炉を修理して使い続ける道ではなく、わずか3年で両炉とも閉鎖する決断をします。焼却炉を持たない、なくてもできるという判断が、この町のその後を大きく変えたのかもしれません。
日本初、ゼロ・ウェイスト宣言
焼却炉を閉鎖した町は、2001年に33分別(のちに35分別)体制へ移行し、高齢者のごみ運搬を支えるボランティア団体も誕生。そして2003年、米国の化学者ポール・コネット博士の講演をきっかけに、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。2005年にはNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーを設立し、まだ使えるものを持ち寄り・持ち帰る「くるくるショップ」などのリユース拠点を整備。2016年には13種類45分別を達成し、リサイクル率は80%台に到達しました。2020年には、住民自身がごみを持ち込み分別する拠点「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」が完成し、視察や交流を受け入れる発信拠点にもなっています。
もう一つの看板、「彩(いろどり)」
上勝町にはもう一つ、全国的に知られる看板政策があります。1999年に町主導の第三セクターとして設立された株式会社いろどりが手がける、料理に添える「つまもの」(もみじや南天など季節の葉や花)の生産・出荷事業です。山や畑で採れる葉を、和食を彩る商材として全国の料理店に届ける仕組みをつくり、地域にもとからあった資源を仕事に変えました。ごみを“資源”にするゼロ・ウェイストと、山の資源を仕事にするいろどり。発想の原点は違うけれど、身近にあったものが資源となることは共通の部分があるように思います。
看板政策を、まちの成長戦略の核に据える
上勝町の第3期地域創生総合戦略では、「いろどり」「ゼロ・ウェイスト」「教育」を継続的に推進する3つの核と明記し、中長期の人口目標として2040年に1,000人程度の確保を掲げています。基本目標の一つには「町に新しいひとの流れをつくる」ことが据えられ、移住・関係人口の創出が戦略の柱として位置づけられています。2018年には内閣府から「SDGs未来都市」にも選定され、まさしくSDGs、持続可能なまちづくりのイメージを広く発信できるようになりました。単発のPRではなく看板政策として、総合戦略の中核に置かれたところが、上勝町の一貫性ととんがったところと思います。
看板の裏に、実務的な受け皿もある
独自色の強い看板政策は、注目や視察は集めやすい一方、それだけで移住・定着まで進むとは限りません。上勝町は、移住者向けの実務的な支援も並走させています。児童のいる世帯への転入支度金(小学4年生以下が対象、30万円)、新築・中古住宅の取得補助(限度額150万円)、空き家改修補助(限度額150万円、最大2回申請可)など、移住のスタートを支援する制度です。看板政策が「関心を持ってもらう入口」と考えると、この実務的な支援は「関心だけでなく実際に住み始める後押し」にあたります。ゼロ・ウェイストセンターは、単なるごみ集積所ではなく、宿泊・交流機能もあわせ持つ拠点として整備が続けられています。ごみを分別する行為そのものが、住民同士や来訪者との会話の機会になっている点も、副次的な産物として興味深いです。
「差別化」は、定着戦略として機能するか
上述した通り、支援金や補助制度は、金額や条件を比べられやすく、どうしても横並びになりがちです。一方で、上勝町のような「他にはない看板政策」はそのような比較の中には入りません。ごみや山の葉を資源として考えた町として発信、記憶され、視察や関係人口、そして移住のきっかけになります。もちろん、上勝町の事例をそのまま他の地域に展開することは非常に難しいことだと思います。自分たちの地域にすでにある気づかない資源や課題を見直し、独自の切り口でどのように解決しどのように育てていくという発想そのものは、多くの自治体にとって参考になるのではないでしょうか。そしてその先で、看板政策への関心を実際の定着へつなげていくには、上勝町のような実務的な受け皿と、移住後まで声を聞き続ける伴走が欠かせません。
ちなみに
いろどりの話は筆者がまだ学生の頃だったかにテレビで観た話を思い出し、今回のブログにしてみました。移住や地方創生とかに関心があったわけでなく、山に落ちている葉っぱがお金になる、そして、その地方に住んでいる高齢者の方がイキイキとその仕事をされている。確か農協の方がどこかで食事をされていた時に、気付かれたビジネス。それが、今は移住や定着のための、他には真似することが難しい地元の露出材料になっている。しかも、筆者にとっては数十年も前に1度だけテレビで見た、それだけの記憶なんです。
- ゼロ・ウェイストタウン上勝「ゼロ・ウェイスト宣言 2003」(NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー運営・町公認拠点) https://zwtk.jp/zwdeclaration_2003/
- ゼロ・ウェイストタウン上勝「上勝町民の取り組み(歴史)」(焼却炉廃止・45分別・リサイクル率・ゼロ・ウェイストセンター) https://zwtk.jp/history/
- 上勝町「第3期上勝町地域創生総合戦略の策定について」(3本柱・人口目標2040年1,000人程度) http://www.kamikatsu.jp/docs/2025040300017
- 上勝町「株式会社いろどり」(町内の第三セクター・設立年月日・資本金) https://www.kamikatsu.jp/3sec/irodori.html
- 徳島県移住・定住ポータル「各市町村の紹介 上勝町」(SDGs未来都市選定・移住支援制度) https://iju.pref.tokushima.lg.jp/about/kamikatsu/


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