農作物を荒らす獣害は、多くの中山間地域が抱える重い課題です。その課題を、市外の人の関心を呼び込むことで、“関係人口”づくりの入口に変えている自治体があります。兵庫県丹波篠山市。2026年、その取り組みが農林水産大臣賞に輝きました。
農林水産大臣賞──全国トップの獣害対策
丹波篠山市畑地区で獣害対策に取り組む「みたけの里づくり協議会」が、令和7年度・鳥獣被害対策優良活動表彰(被害防止部門)で農林水産大臣賞を受賞しました。全国で最も優れた取り組みに贈られる賞で、同市では平成29年度に続く2度目の快挙です。サルの適正な数の管理や、電気柵・サル追い犬・出没を知らせる仕組みなど、あらゆる手を尽くした被害防止が高く評価されました。
「担い手不足」という、対策の壁
同市では、サルやイノシシ、シカによる農作物被害が続き、農業被害額は年間およそ1,000万円、被害面積は8.5ヘクタールにのぼります。防護柵の設置やサルの追い払いで被害は防げますが、柵の維持管理や日々の追い払いを続けなければ効果は保てません。しかし多くの集落では、農家の高齢化と担い手不足が進み、対策そのものが重い負担になっています。
獣害対策を“開いて”、市外の仲間を増やす
そこで丹波篠山市は、獣害対策を地域の中だけの課題にせず、外に“開く”道を選びました。「獣がい対策実践塾」では、高校生や大学生、野生動物や丹波篠山に関心のある人などを対象に、専門家から動物の習性や対策を学び、農家と一緒に防護柵の点検・修繕、わなの設置、ジビエ体験までを行います。畑地区では、放置された柿がサルを引き寄せることから、サルより先に柿を収穫する「さる×はた合戦」といったユニークな催しも生まれています。地域の外の人が、楽しみながら対策の担い手として関わる——まさに関係人口づくりです。
地域課題は、関係人口の“入口”になる──逆転の発想
この発想は、国の政策とも重なります。農林水産省は、農業・農村に継続的に関わる外部の人材を「農村関係人口」と位置づけ、その創出・拡大を後押ししています。獣害という切実な課題を隠さずに開くことで、「力になりたい」という人が集まる。協議会の会長も、これからも新しいものを受け入れ、関係人口など多様な人の力を借りながら活動を続けたい、と語っています。課題は、人を遠ざけるものではなく、人を呼ぶ“入口”にもなり得る、まさに逆転の発想です。
「関わり」を「定着」へ育てる
関係人口づくりの先には、二地域居住や移住、そして定着があります。獣害対策で地域と関わり始めた人が、やがてその土地に通い、住み、根づいていく——関わりの入口から定着までは、一本の線でつながっています。丹波篠山市の事例は、地域課題を“開く”ことが、その第一歩になり得ることを教えてくれます。
- 丹波篠山市 市長日記「獣がい対策で農林水産大臣表彰!」(2026/3/5) https://www.city.tambasasayama.lg.jp/gyoseijoho/shichonoheya/shichonikki/kako/2026/3/30331.html
- 農林水産省「鳥獣対策優良活動表彰」(これまでの表彰) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hyousyou_zirei/hyousyou/hyousyou_koremade.html
- 丹波篠山市「鳥獣被害防止計画(令和7年度)」(被害額・面積) https://www.city.tambasasayama.lg.jp/material/files/group/150/chojuboshikeikaku7.pdf
- 農林水産省「農村関係人口について」 https://www.maff.go.jp/j/nousin/231221.html
- 丹波篠山市「丹波ささやま写真新聞:さる×はた合戦」 https://www.city.tambasasayama.lg.jp/news/2019/tambasasayamashashinshimbun/4698.html
※「獣がい対策実践塾」の内容は、丹波篠山市の発表資料を参照。


コメント